episode #004 ピンクのカーネーション

最初に 声を大にして言っておきたいのは
わたしは 母が 世界一 宇宙一 大好きで 大好きで 大好きで
美人で ほがらかで おっとりしていて やさしくて ひだまりみたいにあったかくて
手作りが好きで フラダンスと少年隊が好きで
父のことを心から愛して
私と弟のことを ほんとうに 愛情深く育ててくれたことに
心から感謝している ということ

母が私を産んでくれた11月15日のことを母と語るたびに
母のことを想うたびに
涙がとまらなくなってしまうくらい
母を敬愛してやまない

そんな母は ときどき 悪気なく
思ったことを そのまま口にしてしまうことも あったりする
それは 母が純粋で汚れない心をもっているからこそなのだが。

それゆえに 子供の頃、母の日に私が贈ったピンクのカーネーションには
今も忘れられない ちょっぴりしょっぱい味のする
思い出が詰まっている。

今では 色とりどりのカーネーションが店先に並ぶご時世となり
ことしは 紫色のブルーカーネーションなるものも誕生したけれど

わたしが子供の頃は、母の日のカーネーションは 赤 と決まっていた。
(うなづいてくれるあなたはきっと同世代)

赤は、生きているお母さんに
白は、亡くなったお母さんに

というのが一般的なカーネーションの色に込める意味だった。

ある年の母の日のこと 赤のカーネーションを買いにいった私は
花屋の店先で
とても可愛い小さなピンクのカーネーションを見つけた。

私にとっては母のイメージカラーは ピンク そのもので
母は4月生まれで 小柄で、可憐で やさしくて 笑顔がキュートな人で
ピンクが似合う。これは ほんとうにお母さんみたいな花だなぁ。。。

こんな素敵な色のカーネーションをみつけて
すごくドキドキして
悩んだ末に、思い切って買うことにして
それをラッピングしてもらった。

ああ、なんて かわいいカーネーションなんだろう!!!

私は、おかあさんがどんなに喜んでくれるかと
うれしくてわくわくして
大事に抱えて なんども なんども その花をみては
母を想い、期待に膨らむ胸の高鳴りをなんとかおさえつつ
意気揚々と 家に帰った。

「おかあさん ただいま! はい、これ!! 」

母が 喜んでくれると 信じきっていた私は
母がちょっと とまどった表情で いった一言に 凍りついた

「あら、、ピンクなの? 半分死んでるみたいねぇ。。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

長い沈黙のあと 体がわなわなと震えだし
自分の感情を抑えきれなくなり

私はそのカーネーションを 床にたたきつけてしまった

「ひどいよ ひどいよ、 おかあさんなんて 大嫌い!!」

くやしくて くやしくて たまらくて 大泣きした

あんなに 迷ったのに
あんなに ドキドキしたのに

わたしは ばかだった

おかあさんが 喜んでくれるとばかり思い込んでいた
おかあさんを よろこばせるどころか

半分死んでるみたいなんて

そんな風に思われるなんて これっぽっちも考えてもみなかった

おかあさんが大好きなのに
おかあさんを大嫌いと叫んでしまった 自分のことも なさけなくて

でも・・おかあさんのことが ほんとうに大好きだから選んだんだよ。。。
そんなことくらい わかってよ。

子供だったから 言葉にすらならない気持ちが溢れ出て
大声でわめき泣いた

***

今では
当たり前のように ピンク色のかわいいカーネーションはたくさん店先に並んでいるし
母は そんなことが あったことすら きっと覚えていないだろう。
そういうところも 母のいいところなのだ。

まあ、しかし それ以来
母には花ではないものを贈ることにしている
4月に誕生日だから ずれこんで 誕生日プレゼントといっしょになっちゃうこともあるけど。
今年は ピンク色のロールケーキ。
明日きっと届くはず。

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